東京で非日常の時を過ごしたくて。
辿り着いた先が、目黒にあるデザイナーズホテルだった。
本当の気持ちを浮き彫りにしたところで。
誰が解決するのだろうか。
半ば諦めの気持ちで溢れ、解決する術(すべ)などなく。
一人で抱えていればいるほど。
それがちっぽけな悩みだったとしても。
それが他愛もない課題だったとしても。
それを秘密にしているというだけで。
ものすごい貴重で重大な事実のような気がするのだから。
そうして人は頑なにその秘密を胸に。
誰にも理解されないという思いを糧に。
その特別感に浸り、自分を唯一無二の存在にするのだ。
誰にも理解されないということを。
それを求める前に諦めてしまうのは。
それはある意味エゴであるのだから。
果たして、特別という意味はなんだろうか。
ハレとケがあるのならば。
すでに私の中で、絢爛豪華なことだけがハレではなくなって来ているのだろう。
特別なことは日常の繰り返しの中にあり。
変わらぬ日常と、穏やかに過ごす日々なのだと。
改めて思うことになるとは、あの頃の私に想像出来ただろうか。
やがてそれは日常となり。
迎え入れることとなり。
あれほどまでに抵抗していたことに。
もはや、鮮度を求めることではなく。
日常が繰り返されることに価値を見出す。
とはいえ。
日常の繰り返しを求めるのならば。
波風が全く立たない凪が続くこともなく。
元来、私の性格がそれを永遠に求めていると問われれば。
否。と答えるしかない。
そうなのだ。
私はそもそも刺激が好きで。
だからこそ、きっと好戦的になってしまのかも知れない。
相変わらず、自己分析ができているのかどうなのかは不明だけれど。
また新しいおもちゃを投入された直後に。
己の態度の豹変ぶりに、我が身ながら驚くのだった。
それは外的要素から成る刺激で。
つまるところ、それを求めていたのだろうか。
最初に提案された時のその場所は。
心が踊る程に素晴らしい提案だった。
むしろ、それは分不相応であり。
また、他人事でしかなかったのだ。
いつしか日常と化し。
当たり前のような振る舞いになっていたけれど。
私は心からそれに気を許すことはできず。
次第に疎遠になっていった。
そんな矢先の出来事だった。
それは、化け物なのだろうか。
得体の知れないモンスターなのだろうか。
中身は一体何者なのだという疑心暗鬼はいつまでも続いているのだろうか。
信頼することと、信用することは違うと言うけれど。
私はどう思っていて、どう思われているのかなど皆目見当がつかない。
しかるに、こうしていることさえも。
常に蜘蛛の糸の如く、細く繊細で。
いつ、どんな気分でプツリを断ち切られるかなど。
知れたものではないという気持ちと。
常識などそれぞれ違うのだから。
価値観も同様に。
そのことを繰り返し伝え。
理解しようとする姿勢を持ち出し。
大人げない態度をしながらも。
然として、私はわたしの姿勢を貫く頑固者なのだろうかと振り返る。
初めて訪れたそのカフェは。
冷たい雨の日に、私を優しく迎えてくれた。
ストレートパーマにした私の髪は。
私の期待を他所に、ぺしゃんこに収まってしまった。
気まぐれで気分転換したかったのに。
施す前より気分が落ちるというのは如何なものかと自責する。
新しい帽子をかぶりながら。
幾分、機嫌を取り直し。
私はそうして、日常の些細なことで喜怒哀楽の感情が激しく動き。
この先も時折、自己嫌悪に苛まれながらも。
自分のことが大好きでいて、もう一人の自分と折り合いをつけながら生きて行くのだろう。
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