vol.44 無垢とか穢れとか〜庄内旅行記 2019〜

人の幸せなど。
その人にしか分からない。
私が幸せしにしてあげられるだろうか、とか。
他の人の方がふさわしいんじゃないか、とか。

そういう言い訳をして。
自分はどうしたいのかを、相手に伝えずに。
相手の選択に見立てて、自分の都合のいいように導くことに。

主語をすり替えないで。
そうされればされるほど、私は辛くなるのだから。
こちらの願いは、あなたの希望するものではないということを。
全く理解されていないことが、いっそうに悲しさを増幅させる。

人の気持ちなど縛れるはずもなく。
年齢や経験値を重ねれば、見える景色が変わってくる。
それは至極当然のことで。
そうでなければ、自己成長などは存在しない。

あなたに、私の気持ちなど分からない。
だから、あなたの気持ちを知りたい。

そう伝えたとしても。
相手を傷つける自分から逃げたり。
自分が傷つくことから逃げることに。

無意識がそうさせる。
どんなに本心で自分が苦しいと感じていても。
人は自分にトドメを刺すことをためらうのだから。

自虐だって。
自分を守るためのものであり。
問題のすり替えになり。
誰かを意識したものでしかないのだから。

その苦しさは自分で背負うもので。
その十字架は消えないのだ。

誰かの不幸せの上にある自分の幸せは。
果たして本当に幸せなのだろうか。
そういう覚悟をして。自分に正直に生きればいい。

法で守られること。
法で縛ること。

自由でいることは、そういうことなのだろうけれど。
実際はより複雑怪奇にできている人の気持ちや関係性。

もう少し、出会うのが早かったら。
あの時に決断していなかったら。
もっと反対してくれていたら。

もし、こうだったら。
という妄想を持て余すようだったら。

自分の中にある世界で完結させるか、
芸術や小説などの作品で昇華させるしかないのだ。

人との巡り合わせは、奇跡の連続だけれど。
自分の生き方がそうさせているのだから。

めくるめく季節をすり抜けて。
いつしか43歳の夏を迎えていた。

毎年のように、年齢を数え。
その今の自分と向き合う作業。

庄内平野を見渡しながら。
日本の原風景に本能を研ぎ澄ませて。

運命と宿命に翻弄されるのではなく。
自分で選択できる運命を引き寄せて。

建前など削ぎ落として。

経験はその人の魅力となり。
意図せずにも深さを増す。

無垢で可愛いいのは、幼い時だけでいい。

大概の大人になったところで。

穢れていようがいまいが、
動じぬ自分が出来上がっていることで、
よしとするしかないのだから。
 
 
 
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