vol.69 秋空と、反復する過去と、流れる未来を。〜コンラッド東京編〜

めっきりと人と会うことが減ったけれど。
クローゼットの中を定期的に入れ替える。

巡る季節に。
一着ずつ手に取りながら、過去に浸る時間。

「このブラウスを着てANA修行したなぁ。」
「このワンピースは、あの時あの場所で一目惚れしたんだった。」
「来年もこのチュニックを着て旅に出られるかな。」

様々な思いが頭の中で再現されるけれど。
美化しているかも知れないけれど。

そこに居た時のこと。
過ごした時間。
景色や感情までもが蘇って。
なかなか衣替えが進まない。

思い出を仕舞い込んで。
また来年、この気持ちに浸りたいのだろうか。

それとも。
新しい服を着て。
記憶を重ねた方がいいのだろうか。

そんなことを、いつも考える。
その時間が大切だということを。
刹那に流れる時の中で。

数々のホテルを訪れて。
あの時はどの仕事だったかなぁ。とか。
誰のために準備したんだったっけ。とか。

そういうことの一つ一つを。
覚えてないようで、
やっぱり私の記憶の中に格納されていくのだから。

春に訪れた時と同じ色の服を着て。
今度は、弾むような気持ちで訪れた。

言葉が紡ぐ責任を。
人はどれくらい認識して声に出しているのだろう。

（10年後もこうしていられたらいいのに。）
そう思うことの曖昧さと。

「10年後もこうしていられるといいね。」と。
言葉にして、輪郭を持たせることと。

相手に与える枷になることを、知っているのだろうか。

その責任は、
自分が想像する域を超えて、相手に届く。

無意識に発する言葉ほど。
無防備で破壊力があることを。

どうか。
知っておいて欲しいと。

私は誰に向かって届けたいのだろうか。
そんなことを漠然と考えながら。

コンラッド東京の夜景を眺めながら。
そっと、相手のいない言葉をこぼして。

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